就職活動に励まれている学生の皆様、はじめてお目にかかります。
岡山市北区表町にて「アイウェア・カイロス」と「999.9 selected by KAIROS」という眼鏡セレクトショップを営んでおります株式会社平田光学の平田俊三でございます。

私の場合は実家の眼鏡屋を継ぐことを決めていましたので、東京の大学を卒業して大手メガネチェーン店に就職し7年間勤め、30歳で岡山に帰り平田光学を引き継ぎ、37年間で今日に至ります。
平田光学は、今年で創業62年目を迎えています。
したがいまして、私自身が就活をしたのは44年も前のことですし、その後事業承継をいたしましたので、今日は就活アドバイスとは別の視点から、「決めることの大切さ」と「仕事を楽しむコツ」についてお話したいと思います。
さて、37年前に先代の父の急逝により大手メガネチェーン勤務から突然岡山に帰り、古くから続く眼鏡屋平田光学に就職しました。
当時、社員さんは、親子ほど年の離れた番頭さんとパートの女性ひとり、商品管理は全くされてなく、眼鏡屋なのにタバコ、宝くじ、望遠鏡、双眼鏡、温度計、方位磁石など、平田光学だからなのか光学関連のものが溢れていました。
当初、全くお金もなく、なにから手を付けてよいかわからず、とりあえず壁紙や布を使って手作りで内装を変え、岡山や大阪、東京の問屋さんに頭を下げて委託販売を依頼して商品を調達しました。
そして、「3年後にタバコ、宝くじ販売をやめて眼鏡専門店として改装しよう」と決めました。タバコと宝くじ販売は、そこそこの収益が上がりますのでやめるのはもったいないと周囲から言われましたが、眼鏡屋は専門店でないと生き残れないだろうと感じていました。
また当時、景気は良かったですからそれなりに売り上げは伸びましたが、「経営」という世界を全く学んでいませんから、ただただがむしゃらに働くだけで店はディスカウンターと化し赤字続きで、資金繰りだけ何とか回しながら、とても苦しかったのを覚えています。

次に決めたことが「3年かけて、値引きをしない店を創る」です。
昭和から平成に代わる頃の眼鏡業界は、大手メガネチェーン店の「価格破壊」チラシが席巻し、ディスカウント販売のピークでした。私たちのような小さな眼鏡屋でも大手メガネチェーン店と価格競争をしていましたが、利益を圧迫するばかりで敵うはずはありません。
「値引きをしない店」つまり大手メガネチェーン店が扱っていない眼鏡ブランドを探そう、問屋さんではなく眼鏡デザイナー、作り手から直接仕入れようと決めました。
行動は、今まで行ったことがなかった海外の眼鏡展示会への挑戦です。
パリのシルモ展、ミラノのミド展、ニューヨークのヴィジョンエクスポ、その他デンマーク、香港、上海など主要な海外眼鏡展示会に右も左もわからないまま、すべてに出かけて行きました。
そこで、世界中の優秀な眼鏡デザイナーと直接交渉するという仕入れ手法でセレクトを広げていきました。素晴らしいデザイナーたちの熱き想いも一緒に仕入れてくる楽しさは、眼鏡ひとつひとつに輝きを感じ始めた瞬間でもあり、おかげで、大手メガネチェーン店にはない日本では数少ない「眼鏡のセレクトショップ」が完成いたしました。
これは、父のあとを継いだ私が「第二の創業」を果たした瞬間でもありました。
そしてその後も、3店舗目の出店や店舗リニューアル、オリジナルブランドの開発等「すべてまずやる。そしていつまでにやると決める」ことから始め実行してきました。
もちろんたくさん失敗もありましたが、人生を主体的に生きてきたことに悔いはありません。
このプロセスの中で、大きな気づきがありました。
それは、「人生は思う通りになる」ということです。これは真実です。
思う通りになるというのは、自分でこうなるんだと強く心を決めて行動し続けると、それは必ず実現するということです。
こういうお話をすると、「いやいや人生思い通りなんてならないよ」という人がいますが、その方は「人生は思い通りにならない」と決めてしまっているので、「思い通りにならない」と思っている通りの人生を送っていらっしゃるということではないでしょうか。
まず目的を明確にする、そしていつまでに達成させるかを決め、逆算式に計画する。
たとえば5年先に達成すると決めたならば、4年後はこうなっている、では3年後はこうなってなければ間に合わない、そして2年後は、1年後はと逆算していき、では今すぐ何を始めるかと決めて、即動き始める。
「夢は逆算式に決めていき、行動は加算式にやり続ける」ということです。
決めた目的に対して「出来るだろうか?」と決して疑わないことが大切です。
また目的を明確にせず期限も決めないで手段方法ばかり考えて「出来るだろうか」と躊躇している人がいますが、それでは願望のままで終わってしまい「思う通り」にはならないですね。
まさに「未来は、今である」です。

次にこのプロセスの中で眼鏡屋という仕事に関して、もうひとつ大きな気づきがありました。
以前は「眼鏡は必需品だから、眼鏡屋は社会に必要とされる仕事」という考えでしたが、気が付くと眼鏡そのものに惚れ込むようになり、「眼鏡が大好き!」「カイロスの素敵な眼鏡はお客様を幸せにする」という感覚に変わっていました。
また、新入社員の教育目標が「素直であること、向上心があること、プラス思考であること」に加え、「眼鏡を好きになること、惚れこむこと」が加わり、眼鏡という「商品」が「アート作品」というイメージとなり、「接客は販売ではなく、プレゼンテーションである」という姿勢に変わりました。
価格訴求はお客様がお求めになることであれば、本当に大切な戦略ですが、こちらの売りたい気持ちが優先されれば、販売に嘘が入ってしまいます。
その意味でも、自分たちが惚れ込んでセレクトした国内外の「アート作品」を、その素晴らしさをプレゼンテーションすることでお客様にお伝えしていく、売ろうとしないという姿勢は私たちの誇りとなっています。
「仕事を楽しむコツ」として、自社が扱っている「もの」、もしくは「こと」に惚れこむことが出来ればとても幸せなことですね。
第一に、「眼鏡はアートであり、文化である」というコンセプト。
第二に、「接客は販売ではなく、プレゼンテーションである」という接客姿勢。
第三に、「お客様は、不特定多数ではなく特定少数である」というターゲット。
第四に、「お客様の、お喜び第一に」という行動規範。
以上が、こうした経験を経て構築された平田光学の経営戦略です。
もし、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コラム拝見しました。平田社長の人生哲学の一部分を知ることができたように思います。表町にある、あのスタイリッシュなガラス張りのメガネのセレクトショップには社長のこだわりが詰まっているんですね。
私が読んでいて特に素敵だと思ったのは、「接客は販売ではなく、プレゼンテーションである」という接客姿勢です。本当に自信のあるもので、自分が心から惚れ込んだものだからこその接客なんだと思いました。
いつか機会があったら社長、こだわりのメガネを見に伺いたいです!
まとめとして、『以上が、こうした経験を経て構築された平田光学の経営戦略です。』とありました。コラムを読んでいて、差別化をはかったことや、売るというよりもプレゼンテーションなど。”経営”という視点が随所に含まれており、興味深かったです。
人生は自分でこうなるんだと強く心を決めて行動し続ければ、思い通りになる。
本当にその通りだと思います。
すべては自分次第。自分という軸をしっかり持ちたい。 そう強く感じました。
取り扱っている眼鏡やそれに込められたデザイナーさんの想い、そしてその眼鏡を求めるお客様をとても大切になさっているのだなとコラムを拝読していて強く伝わってきました。
売らないと利益にならないから、という考えで接客されるよりも、取り扱う品のことを本当に愛しているのだなという想いが伝わってくる接客の方が客側の立場として考えるととても嬉しいことだなと思いました。
是非一度、お店で扱われている眼鏡を拝見しに伺いたいです!
平田さんのコラムとても心に刺さりました!私も同じような志で今の仕事に取り組んでいて少し誇らしかったです笑
一つアドバイスをいただきたいのですが、やはり、人生は思い通りになるとは言っても夢を叶える途中のプロセスでは全てが思い通りにいかないことは沢山あると思います。その場合を見据えてやはり最初から第2プランなどを考えているのですか?それとも、最初は第1プランを押し通すためにも考えずに一所懸命頑張り思い通りに進まないとわかった時点で、考え直しているのですか?私は集中して頑張れるのもあって第一プランのみを考えるタイプでした。しかし、よくうまくいかなかった時のためのプランを何通りか考えておけと言われます。平田さんはどう考えになられますか?
コラム読ませていただきました。こんな素敵な眼鏡屋さんが岡山にあるのだなととても読んでいて嬉しくなりました。質問なのですが、メガネとコンタクトレンズを併用したいのですが、お店で相談に乗っていただけますか?