皆さん、こんにちは。久保田康司と申します。
私はマネジメント・ラーニングという人材育成のコンサルティング会社を経営しております。主に企業研修のプログラム開発、研修やセミナーの講師、執筆活動を行っております。独立するまでは3つの企業で働いてきました。その3社はカネボウ(当時は漢字で鐘紡と標記)、ユー・エス・ジェイ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営会社)、SMBCコンサルティング(三井住友銀行グループ)と全く異なる業種になります。そんな私の経験が皆さんのお役に立てれば幸いです。

就職活動をしていると、大きく2つの悩み事にぶつかると思います。1つ目は自分が一生を通じて本当にやりたい仕事は何なのか、2つ目はやりたい仕事が見つかっても、その仕事が出来る会社があるのかです。私の結論を2つ申し上げますと、1つ目は「やってみないとわからない」、2つ目は「環境の変化とともにやりたいことは変わる」ということです。そんな言い方をすると怒られそうですが、本当にそうなのです。
まず私の就職活動ですが、大学でマスコミュニケーションを専攻していましたので、大手のマスコミ会社に多数エントリーしました。ただし、マスコミはかなりの狭き門です。当時は強力なコネが必要だとも言われました。当初からあきらめ気味の私はマスコミ以外にも、商社、アパレルメーカー、旅行代理店、百貨店など業種を絞らずに広くエントリーしました。要するに華やかなイメージで業種を選んでいたのです。当然、マスコミは全て落ちましたが、アパレルメーカーや旅行代理店など3社から内定をもらい、カネボウに入社したのです。
当時のカネボウはクリスチャン・ディオールのライセンスを持っており、婦人服や紳士服などを展開していました。私はディオール事業部で働くことをイメージしながら、意気揚々としていました。ところが、いざ入社すると誰もが希望しない一番不人気な事業部へと配属になったのです。要するにいきなり島流しです。入社後一気にどん底に沈んでしまい、こんな会社辞めてやろうと思いましたが、どうせ辞めるなら実績を残して辞めてやろうと思い、結局10年働くことになりました。その間、営業成績では事業部でトップになりましたし、将来を見据えて英語も勉強していました。英会話学校や通訳養成学校に通い、TOEICで860点ほどの点数を取るまでになりました。その間転職活動も行い、英語を活かせる外資系のコンサルティング会社などに応募をしてきました。ちょうどその頃、大阪にユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開業する計画を知ったのです。そして、ここぞとばかり応募した結果、運よく採用されたのです。これはカネボウ時代に腐らずに成績を残し、地道に続けた英語学習のおかげだったと思います。
ユー・エス・ジェイでは、開業前に1デイパスや2デイパス、年間パスなどの企画担当をしていましたので、本当にやりがいのある充実した日々が続きました。マーケティング本部に所属しながら、知識のなさを痛感した私は開業後にビジネススクールに進学し、MBAを取得することになりました。ユー・エス・ジェイは華々しくグランドオープンを迎え、私もやりがいを感じていましたが、その後風向きが変わります。私のことを採用してくださった上司が退任し、その後何人かの上司が短期間で変わるようになるのです。そうなると部下にも影響が及びます。たった一人の上司で人生が変わるということを私も経験しました。
私はカネボウ時代にコンサルティング会社を検討していたこともあり、コンサルティング会社に絞って転職活動を始めたのです。その結果、三井住友銀行グループのSMBCコンサルティングに転職が決まりました。ユー・エス・ジェイでは6年と半年お世話になったことになります。SMBCコンサルティングに採用された理由は、MBAホルダーであることと、ユー・エス・ジェイでの企画経験があったからです。
SMBCコンサルティングは人材育成に関するコンサルティングや企業研修、ビジネスセミナーの企画運営をする会社で、私にとってもまったく初めての経験となります。これまで営業やマーケティング畑だった私は業務には慣れても、組織開発や人材育成に関する知識が不足していると痛感し、再度ビジネススクールに進学し、組織行動を学ぶことにしたのです。SMBCコンサルティングの経験やビジネススクールで学んだことが今の自分につながっていると思います。
私はカネボウ、ユー・エス・ジェイに入った時、それぞれ天職で一生働ける会社だと思っていましたが、配属や人間関係により、状況が一気に逆転することを経験したのです。今は昔と違い、理不尽な人事異動や配置転換、劣悪な人間関係を経験することはないと思いますが、それでも企業に勤める限り少なからずこれらの問題は付きまといます。ですから、「やってみないとわからない」のです。そして、どんなに順風満帆であったとしても「環境の変化とともにやりたいことは変わる」のです。会社の業績、組織再編、人事異動など何が起こるかわからないのです。私の友人でも、大手企業に就職し、一生安泰だと思っていたのですが、所属する事業部が他社に売却された結果、一気に待遇や人間関係が変わり、人生が急変した人もいます。
全ての人が会社の業績、昇進、異動、結婚、出産、親の介護などの環境の変化に伴い、やりたいことも変わってくるのです。ですから、学生の皆さんにお伝えしたいのは、自分のやりたいことが見つからないまま、たまたま内定が決まった会社に就職するもよし、見事第一希望の会社に就職するもよしなのです。重要なのは、働いてからいかに環境の変化に応じて自分を変えていくかだと思います。
私はカネボウ、ユー・エス・ジェイ、SMBCコンサルティングに入社をしたときは、多くの人から「すごいですね」と言われました。これは私がすごいのではなく、会社がすごいだけなのです。皆さんには、どの会社に就職するかで高い評価を得るのではなく、どのような仕事が出来るのかで高い評価を得る人材になって欲しいと思います。そして、就職活動は人生の通過点であり、どんな選択をしようともそれで人生が決まることはないと思います。ですから、無理に選択肢を狭めることなく様々な可能性を探って欲しいと思います。
Profile
関西大学社会学部卒業、関西学院大学大学院商学研究科修了(MBA)、神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程後期課程修了(博士)
職歴
1989年鐘紡株式会社入社、ファッション事業部で営業を10年経験。
1999年株式会社ユー・エス・ジェイに開業メンバーとして参画、マーケティング企画室マネジャーや近畿地区統括マネジャーを歴任。
2005年三井住友銀行グループのSMBCコンサルティング株式会社に転職、人材育成の仕事に携わる。
2012年マネジメント・ラーニング設立、大喜業から中小企業まで人材育成のコンサルティング、研修プログラムの開発、インストラクターの養成、執筆や講師などを行っている。
主な著書
「使う!ロジカル・シンキング『結局何が言いたいの?』と言わせない最強の伝え方」日本実業出版社
「上司の自律性支援とコーチングが部下の動機づけに与える効果影響~自律性支援に着目して」文眞堂
「最強のチームをつくる10の鉄則―チームづくりから部下育成までの職場リーダー学」セルバ出版
「ビジネスリーダーのためのファシリテーション入門」同文舘出版
コラム読ませていただきました。カネボウ、USJ、SMBCといった超有名企業での経験をお持ちということで、ぜひ就活の参考にさせていただきたく、拝見いたしました。
どの過程においても常に学び続けようとする久保田さんの姿勢が、素直にかっこいいなと思いました。自分が望んだ環境ではなくとも、自分のできる最大限の努力をして、環境の変化に適応していくことができる柔軟性を本当に尊敬します。
また、文中の「やってみないと分からない」という言葉が印象的でした。自分が目指す職業は本当に自分に適しているのか、一生をかけてやりたい仕事なのかといった疑問は就活中常に頭の中でぐるぐる回ってはいますが、一度この言葉を思い出して自分の最大限をを尽くしながら「やってみよう」と思います。
「就職活動は人生の通過点であり、どんな選択をしようともそれで人生が決まることはない」
たしかにそうですよね
このメッセージ、そして、コラムを通して述べていらっしゃった「やってみないとわからない」
これらを読んで、「よし、ほんならやってみよう!」という気持ちなりました!
頑張ります!ありがとうございました!
私は高校受験、大学受験、就職活動、どれもその一つの選択、結果によって人生が変わってしまうと思ってしまいがちです。多くの人がそうなのでしょうが、このコラムを読んで、私は色々なことにチャレンジして、嫌なことも一旦挑戦してみることを心がけようと思いました。そうすればもしかしたら、より良い人生の選択肢が見えてくるかもしれないからです。とても人生の選択肢の視野が広がる素敵なコラムでした。ありがとうございました。