ikigai laboの小原 裕美(こばら ゆみ)と申します。

私は、大学のキャリアセンターで延べ4,000名の就職支援に携わりました。
学生さんだけでなく、教職員の方々向けに『学生のためのキャリア支援』というテーマで講演させていただいたこともあります。学生さんの言葉をどのようにして引き出すか、履歴書・エントリーシートの添削・面接練習をどのように実施しているか、企業が面接の際に何を見ているのかなどをお伝えさせていただきました。結果、多くの反響があり、アンケートには次回に向けてのリクエストを記入して下さった方々もいました。私が学生支援に関わった時の経験を共有させていただくことで、皆さんが前へ進むためのきっかけになれば幸いです。
学生の皆さん、就職活動を楽しんでいますか。
きっと多くの方が「早く終わらせたい」「しんどい」と思いながら活動をされているのではないでしょうか。
私が関わった学生さんの中にも、そのような方がいらっしゃいました。
とても不安そうな表情でキャリアセンターに来られる方や、エントリーシートが白紙のまま、申し訳なさそうに「お願いします・・・」と提出される方もいました。
中には不採用の通知を受けたときに自分を責めたり「決まればもうどこでもいい」と投げやりになったり、「あいつには負けられない!」と焦りや怒りをあらわにしたり、家族や友達のことで悩みを一人で抱え込み、泣き出す方もいました。
最初は就職活動に対してネガティブな気持ちを持っていた学生さん達も、採用が内定し改めて就職活動を振り返ったときに、こんな風に語られていました。
・自分の将来について見つめ直すことができた
・私の立場になって一緒に考えてくれて凄く心強かった
・さらなる自信とやる気につながった
・ただ就活しただけでなく、それ以上に学ぶことの多い時間にすることができた。
・面接練習をした時のポジティブフィードバックを思い出して、本番では全く緊張せずに自信を持って自分のことを話せた。
・3年後、5年後の目標を何度も話すうちに、将来自分がどんな職業人になっていたいのかが明確になった。
・就職のことだけでなく、生きていく上で大切なことを教わった。
なぜでしょうか。
仕事を通して何を実現したいのか。
これからの人生を、どう生きたいか。
彼らはエントリーシートの添削や面接練習を通して、これからの自分のキャリア(生き方)を何度も言葉にし、自分の耳でそれを聞いていたからです。
学生さんができるだけ楽しく就職活動ができれば、キャリアセンターに来ることが楽しみだと思って下されば・・・。そのような思いで、私は学生さんたちと向き合ってきました。ですから、エントリーシートが白紙でも、「一緒に考えましょう」と言って、私は叱りませんでした。学生さんたちと楽しみながらも真剣に、思いや考えを言葉にしていただく『対話』を何度も重ねました。
学生さんひとり一人に向き合いながら、今の気持ちをすべて吐き出していただく時間に切り替えたことも何度もありました。何社も面接を受け続ける大変さに共感しながらも、内定を獲得することがゴールになっていると、それは容易に相手に伝わることを説明し、理解して頂いたこともあります。また、矢印を向ける先は面接官であり、闘うのは自分自身とであること。
ひとりで抱え込まずに周りを頼ることも、これから社会人として働く上では大切であることを伝えてきました。
そして、たくさんある職種の中でなぜこの仕事を選んだのか、それはどんなきっかけがあり目指すことになったのか、仕事を通して何を実現したいのかなど、原点に立ち返り言葉にしていただきました。
そんな話をしていると、学生さんたちの目は真剣な眼差しに変わり、熱意を持って語り始めます。言葉にすることが自分を奮い立たせ、本来の自分を取り戻すことができる。言葉の影響力の大きさをいつも実感していました。部屋を後にする時にはいつも、学生さん達は「ありがとうございました!やる気が出ました!」と帰っていくのです。
私が学生さんたちに一番大切にして欲しいと伝え続けてきたことがあります。
それは『自分の思いや考えを、自分の言葉で語ること』でした。
言葉にすると意識化します。自分はこの考えを大切にしていたのか。こんなことをやってみたいと思っていたのか。それってどうしてだろう?どうしてこのことに拘っているのだろう?
自分にしっかり向き合い、見つめて気づいていただくために、私は学生さんが話して下さった言葉を拾い、色々な角度から『問いかけ』をしていました。
なぜなら、答えは学生さん自身の中にあるからです。
初めての就職活動ということもあり、不安や焦りから学生さんたちはインターネットや書籍で話し方の『ノウハウ』を情報収集していました。きっと『正解』を探していたのではないかと思います。企業研究や業界研究をするための情報収集とは違い、面接でお手本となる話し方を探している方が多かったです。
そんな学生さんたちに対して、私はこんな風にお伝えしていました。
「インターネットは情報が錯綜しているから、最終的に振り回されやすい。正解はない。」と伝えていました。正解がないものをいくら探したとて、自分の言葉はそこには無いのです。
どこかから借りてきた言葉を話しても、相手には伝わりません。自分の中から出てきた言葉が、相手の心を動かすのです。なぜなら、言葉にはその人の価値観が包含されているからです。
ここで少し私のことについて書きたいと思います。

私は商業高校を卒業後、経済的な理由から就職する道を選びました。教育業での受付や製造業では総務経理を経験した後に、人の人生の役に立ちたいとの思いから、人材会社に転職し求職者支援に携わりました。対人支援の仕事は大変でしたが、それ以上にやりがいがありキャリアカウンセラーの資格もその時に取得しました。
一方で、自分の知識不足を痛感することもありました。学び直しをしなければ・・。そう思った私は、子どもが2歳の時に日本で初めて通信制教育を開始した、法政大学経済学部に入り8年間かけて学び卒業しました。大学で知り合った先輩とは今でも連絡を取り合っています。また、仕事と育児・学業の両立の大変さを経験しながらも、何とか後に続く人たちの道は創れたかなと思っています。

8年かけて卒業しました。
その後は大学のキャリアセンターで就職支援を経験し、自然な流れで独立に至ります。
「人生に正解はあるか」と聞かれたら、私はないと答えます。高校3年生の時に、将来キャリアコンサルタントとして仕事をすることを思い描いていたかというと・・全く想像もしていなければ、その名称も知りませんでした。
今、自分のこれまでの人生を振り返ってみて、自分の生き方はこれで良かったのだと納得することはできています。思うようにいかないこともありましたし、とても遠回りをしたことや辛く悔しい経験をしたことももちろんあります。
でも、一つ一つの経験から得たものは確実にありました。「もうやっていられない!」と投げ出すことはいつでもできますが、それを乗り越えることによって新たな強みを培い、ネットワークが形成され成長できたと思っています。今でも元職場の方々との関係性は続いていますし、これらの経験は私の中での宝物になっています。

人生に正解はありませんが、自分が一つひとつの経験をどのように意味づけるかによってその後の生き方は変わります。否定的な経験さえも受け容れることができるようになった時、自分の生き方を肯定的に捉えることができるのではないでしょうか。
履歴書やエントリーシートを添削していると、相手にマイナスと取られるような内容は書いてはいけないと考える学生さんもいました。例えば、単位を落として留年してしまったなどです。
本当にそうでしょうか。
それであれば、なぜ面接では短所やこれまでの人生で一番の失敗談、挫折したこと、壁にぶつかった経験など、ネガティブ質問があるのでしょうか。
あなたがどのようにしてそれを乗り越えたのかを聞くことで、強みや行動特性、周りの方々に働きかける力があるかどうかなど、たくさんのことが分かるからです。
単位を落とした要因は何だったのか。そこからどのようにして這い上がってきたのか。どんな工夫や努力をしてきたのか。その結果どうなったのか。その経験から何を学び、仕事にどのように活かせるのか。
自分にとって否定的な経験を語ることは、実は複数のあなたの良さが相手に伝わるのです。
ですから、ネガティブ質問が飛んで来ても決して恐れないで下さい。堂々と頑張ってきたことを具体的に語って下さい。あなたの言葉で語ることが相手の心に響き、想いがしっかりと届くのです。
働きたい企業を探す時には、説明会やインターンシップに積極的に参加して色々と『体験』して下さい。そして、分からないことや確認しておきたいことは、どんどん担当者に質問して下さい。
私が担当した学生さんの中に、この企業で働きたい!と思った決め手をこんな風に話していた方がいました。
「良いところばかりをアピールする企業が多い中で、この会社だけが悪い面や課題も正直に話して下さった。だから私はここで働きたいと思った。会社の課題を一緒に解決していきたいと思ったからです。」
この方の言葉が、皆さんの中で何かヒントになれば幸いです。
内定獲得はゴールではなく、一つの通過点です。
あなたがその会社で働いている姿が具体的にイメージできているでしょうか。そこでどんなことにチャレンジしてみたいですか。それはなぜでしょうか。
あなたにとって、『働く』とは何ですか。
あなたのことを必要としている企業は必ずあります。
夢に向かって頑張る皆さんを、心から応援しております。
