いつまでに内定を辞退すれば法的に問題にならないでしょうか?
学生の質問
1社から内定をいただきましたが、その企業と同じくらい行きたい企業での就職活動を続けています。2つの企業で内定が出た場合には、どちらに行くか悩んで内定辞退に時間がかかってしまいそうです。いつまでに内定を辞退すれば法的に問題にならないでしょうか?
弁護士の回答
ガチガチに法的にいうと、民法第627条第1項により、期限の定めのない契約(正社員の雇用契約を含む)は、2週間前に申し入れすれば解約できると言うことになっているので、働き始める前の内定辞退も、本サイトの就活Q&A(2)で書いたとおり「始期付解約権留保付労働契約」が成立していると考えますので、2週間前に申し入れをすれば適法ということになります。
民法第627条第1項だけで考えると、4月入社の場合には、4月1日の2週間前までに内定辞退は適法にできるということにはなります。
ただ、契約当事者の間では信義に則して行動すべきという信義則(民法第1条第2項)という考え方があって、信義則に反する行動は違法とされます。内定辞退の場合も、信義則に著しく反する場合には、不法行為責任や債務不履行責任に基づき、内定を辞退した学生も会社に損害賠償責任を負う可能性があると考えられています。
ご質問の場合では、2社の会社に就職することはできないことは、内定をもらった時点で明らかなのに、内定辞退を延ばして、10月に内定をもらっているにも関わらず、3月まで内定辞退の申し入れを延ばした場合には、著しく信義則に違反したとして損害賠償請求される可能性は否定できないと考えます。
もちろん、新卒の就職活動で内定が複数出てしまうことはよくあることと、会社も学生も認識しているので、複数の内定がでた時点で直ちに辞退していれば、信義則に著しく反するとまではいえないと考えます。「直ちに」がどのくらいの期間かは法律実務でも良く問題になりますが、就職活動という場面でしたら1週間か2週間くらいではないかと考えます。
なお、東京の企業に就職が内定していたが、家族の介護が必要になって、岡山の企業でないと就職できなくなったなどやむにやまれぬ事情があれば、企業も理解をしてくれすはずですし、信義則違反ともいえないので、内定辞退が遅くなっても損害賠償までされるおそれはないと考えます。
以上は、損害賠償請求されるかどうかの観点ですが、損害賠償請求は人生で1回されるかされないかのレベルの話なので、損害賠償請求されるかどうかを行動の基準にすべきではなく、契約の相手方である企業に迷惑をかけない方向(今回のご質問であれば早めの内定辞退をすること)で就職活動を行って欲しいです。
ちなみに、私は働いてみないとどの就職先が良いか分からないので、法律事務所の就職活動では最初に内定を出してくれた事務所に迷わず就職しました。
内定辞退の法的なお話興味深く拝見させていただきました。就職活動中なので、内定をいくつもいただけるのは夢のような話だなと思っていたのですが、もしかしたら考えないといけないタイミングも来るのかなあと読んでいました。
私も、大山弁護士のように、とにかく最初に受け入れてくれたところに飛び込もうという気持ちが今は強いのですが、もしかしたら変わることもあるかもしれないので、その時は、このコラムを読み直してみます!
今年就活を終えた先輩の話を聞いていると内定をいくつも持っているのに、後から良い企業が募集をかけたらまた就活を続ける、より自分が望む会社へ行けるようにキープの会社を増やしているように感じていました。キープの会社があれば家族に何かあったとき、第一志望に落ちた時でも安心ですが、内定を頂いている会社の立場にも立って迷惑をかけないように辞退の決断は早めにしなければならないと感じました。