就活TVをご覧の皆さま、はじめまして。
社会保険労務士の住野千絵(すみのちえ)と申します。
恐れ多くも、私のような者が何か就活に関してお役に立てるお話をすることができるのか…と、少しドキドキしながらも、どなたかの心に温かい希望の光が灯ればいいな、という気持ちで、私のこれまでの職業人生についてお話ししたいと思います。
私は、昔から、なにかと「中途半端」な人間です。
物事を突き詰める、ということをせず、大学受験も就活も、ある意味適当に進路を決めてきました。
そんなことなので、私の就活はとっても薄っぺらいものでした。企業研究や面接の練習をほとんどしないまま、なんとなく応募した会社の採用面接がうまく進み、よくわからないまま内定をもらい、たまたま受かったからという理由でその企業に就職した、というのが私の就活の思い出です。
特に仲の良かった成績優秀な同学部の友達が、何社も受けて全然内定がもらえないと泣いているのを見て、自分がなぜ簡単に内定がもらえたのか不思議でたまらなかったのを覚えています。
でも、人生は甘くありません。
そんな、中途半端な状態で就職してしまったものだから、入社1年目で心をへし折られてしまいました。
昔から中途半端な私ですが、もともと真面目な性格ではあり、周りから期待されれば最大限応えたいという気持ちがとても強いです。そのため、周りからは「しっかり者」と思っていただけることが多いのですが、実際の私はそんなことは全くなく(笑)、「のんびり・まったり・マイペース」というのが本当のところ。
頑張り過ぎて、空回りしてしまったのでしょうね。
当時22歳の私は、「社会に出て働くこと」=「これからは誰にも(親にも)頼らず、自分一人で生きていかなければならない!」と自分を追い詰めてしまい、体調を崩してしまったのです。
その結果、新卒で入った会社を、たった1年で退職することになりました。
今だからこうやって話すことができますが、当時は本当に苦しくて、つらい時期もありました。でも、もともとの真面目な性格が最後の力を振り絞らせてくれ、なんとか転職先を見つけ、岡山市にある税理士事務所へ再就職することができました。
再就職したときは大変痩せこけていて、163㎝の身長に対して約40㎏という体重でした。
ところが、その税理士事務所の昔ながらの温かい雰囲気の中で(というか、毎日のおやつタイムのおかげで)、その後1年間で10㎏近く体重を増やすことができました(笑)。
税理士事務所に入社して何年か経ったとき、縁あって「社会保険労務士」という仕事を知りました。
そのときは、「へぇ、社会保険労務士って何をする仕事なんだろう。」くらいにしか考えていませんでした。
当時の私は、仕事で役に立てばいいな、くらいの軽い考えで、税理士試験の勉強をしていたものですから、同じ士業でも、あまり気に留めていなかったのです。
当然、軽い気持ちで受ける税理士試験に、何度挑戦しても合格することはなく、時間だけ過ぎていく日々でした。ここでも、昔からの「中途半端」な私が顔を出していました。
ある時、母に、
「大学受験も、就活も、税理士試験も、全て中途半端。何か一つでいいから、思いっきりやり切って形に残してみたら?」と言われました。
はっとしました。
それまで私には、何かを納得するまでやり切った!と言える経験がありませんでした。
その時々で、もちろん一生懸命にはやっていたと思います。
でも、「もう少し頑張ればよかったなぁ。」という気持ちがいつも心の中にありました。
ずっと不完全燃焼状態。
それを、母は見破っていたのだと思います。
母の言葉をきっかけに、私は、社会保険労務士の資格を取ろう!と心に決めました。
なぜ税理士ではなく社会保険労務士だったのか、今でもよくわかりません。
社会保険労務士という仕事を知ったときから、なにか、心の中に残っていたのだと思います。
もしかすると、入社1年目で心が折れてしまった私は、労働・社会保障の分野に少しだけ縁があったのかもしれません。
そこからは、本当に必死で勉強しました。
この時ばかりは「やり尽くしたぞ!」といえるくらい、勉強しました。
税理士事務所で働きながらでしたが、たくさんの方達に応援していただいたおかげで、3年かけてようやく社会保険労務士試験に合格することができました。
「不合格」を2回経験しましたが、諦めなければ合格できることを知りました。
その後、約10年間お世話になった税理士事務所を退職し、知り合いの社会保険労務士の先生のもとで業務を学びました。
社会保険労務士になって6年。
今年の4月に独立し、自身の事務所を開業することができました。
今やっと第2の職業人生のスタートラインに立てたような気がしています。
振り返ってみると、やはり、あのときの母の言葉が、社会保険労務士になるきっかけだったように思います。
それまでの期間は、私にとっては長い長い就活だったのかもしれませんね。
就活中の学生の皆さま。
今、どんな気持ちで就活されていますか?
「自分のやりたい仕事がわからない。」
「先のことを考えると不安になるから、何も考えたくない。」
「周りの友達も一生懸命就活しているのだから、私も頑張らなきゃいけないのに。」
もし、こんな風に思うことがあっても、焦らないでください。自分を追い詰めないでください。
本当に自分自身と向き合えるタイミングって、みんな違うのですから。
私は思うのですが、
新卒の就活って、なんで長い人生の中でたった1年間しかないのでしょうね。
人それぞれ、先のことを考えられるタイミングは一緒じゃないはずなのに、なぜか同じ1年の間で今後のことを決めないといけない。
なかなか大変なことです。
私は、就活を(そして、「仕事」ということを)もっと長い目で考えていいと思っています。
焦らなくて大丈夫です。
職業人生は人それぞれ。
たとえ周りとは違う選択をしたとしても、それはあなたにとって必要な選択なのかもしれません。
人生の分岐点はたくさんあって、その時々であなたには道を選択するタイミングがあります。
その分岐点が訪れるまで、選択した道を一生懸命歩んでいけば、必ず次の道に進むタイミングは来ます。
なんとなく、そのタイミングって肌で感じるものです。
あ、今かなって。
その時に、自分の心の声を信じて道を選択すればいいのだと思います。
苦しみや後悔があってもいいのです。
その時はつらくてどうしようもなかったり、情けなくて自分に絶望したりするかもしれません。
でも絶対に、その後の人生の力になってくれますから。
皆さまの人生が、深く色鮮やかなものとなりますよう祈っています。
心からのエールを!
社会保険労務士 住野千絵
岡山県倉敷市生まれ。
香川大学法学部を卒業後、小売業での販売・接客を経て、岡山市にある税理士事務所に入社。在職中に社会保険労務士試験に合格し、税理士事務所を退職後、知り合いの社会保険労務士のもとで業務を学ぶ。勤務社会保険労務士として働きながら、資格の学校で社会保険労務士試験合格講座を3年間担当した。令和6年4月に独立し、「社会保険労務士事務所つむぐ」を開業。
仕事では、専門的な言葉をできる限り使わず、わかりやすい言葉で労務や社会保障のことをお伝えするよう心掛けています。
Thank you for your column!! I’m really sorry to hear that you went through that in your first year of the company! But I find it so inspiring that you worked your way through that and you’re now opening up your own office!! I think that a lot of people can take their parents advice as nagging but I’ve realised that they can’t help but worry as we get older ☺️
自分と向き合うことができるタイミングは人それぞれ、焦らないで大丈夫という言葉が心に響きました。今まさに就活中で、周りが就活をどんどん進めていくのに、自分だけがついていけていない感覚がありずっと不安だったのですが、メッセージのおかげで少し心が軽くなりました。焦らず私なりの選択を大事にしていこうと思います。
私自身も、何かを極めることなく様々なことに手を出して中途半端になってしまうことがあり、住野さんの性格に似ているところを感じました。新卒での就活が人生において最大の分岐点になることは事実だと思います。しかし、住野さんの仰っていたように就活だけが人生の全てではないはずです。まさに現在焦っている自分に対して、焦らなくて良いんだよ、自分のペースで自分のタイミングで大丈夫ということを心に留めて就活に本腰を入れていきたいです。
私もまだやりたいことが何なのかわからず、でもだんだんと就活の話を周りで聞くようになり、考えていかなくてはならないと焦る気持ちがあったのですが、タイミングは人それぞれという言葉を見て、そんなに焦って考えなくてもいいんだと思えて気持ちが楽になれました。少しずつ自分の適性やこれだ!と思えるものを探していこうと思います。
中途半端な気持ちをずっと抱いていたようですが、お母様のある一言によって心機一転し、社会保険労務士の資格を取得すると決断された行動力が素晴らしいと感じました。現在、大学3年生の私は就職活動に真っ只中です。住野さんのコラムを読んで、自分のタイミングで行動することで何か変化が起こり、前へと進むことができるのだと思いました。だからこそ、住野さんがおっしゃった自分自身のタイミングでやりたいことを見つけてそれに向かっていきたいという前向きな気持ちになりました。